音楽の慰問公演の現場

高校生でジャズの部活を創立!その道のりは?

中川瑠以さん
東京芸術大学音楽環境創造科
今回、ジャズ普及協会のために記事を書いてくださいました。 高校生でジャズの部活を作ったという中川さん。その経緯と信念はA4用紙2枚以上にわたる大ボリューム。ジャズに興味のある中高生の方はもちろん、大人の方にも是非お読みいただきたいです。

はじめに

ジャズサックスの演奏家で、現在東京芸術大学音楽環境創造科1年生の中川瑠以と申します。私は高校でジャズの部活を創立し、現在では部員を10名以上かかえるほどに成長させました。他の学校の参考になると考えたので、その経緯をご紹介したいと思います。

ジャズバンド結成~練習の様子

私の学校は中高一貫校です。そして私は中学3年生の時に記念祭で発表することを目標としてジャズバンドを結成しました。実は最初に話を出したのは私ではなくて、ドラマーの友人でした。私はジャズ好きな家庭で育ち、もともとジャズに興味がありました。また中学1年生の頃から学校のブラスバンド部でアルトサックスを吹いていたので、すぐにその話に乗りました。
クラシックピアノ経験者と、ベースを練習中だった友人がブラスバンド部の同期で見つかったので「ドラム、ベース、ピアノ、アルトサックス」のサックスカルテットでバンドを組むことにしました。記念祭団体という形で顧問の先生を探したところ、数学科の先生が引き受けてくださいました。とはいっても、既存の団体で時間が埋まっていたため音楽室は使うことができず、音楽部の部室で大量の打楽器に囲まれながら練習はスタートしました。(写真:練習風景)

私以外の3人は楽器はうまいのですが、ほとんどジャズを聴いたことがありませんでした。そのため最初はジャズに興味を持ってもらおうと思い、とっかかりやすいジャズアルバムをメンバーに聴いてもらいました。
ジャズをやるうえで最も難しいポイントは、即興演奏をすることです。なのでベースラインなども含め、最初はプロの演奏を譜面に起こしてそれをそのまま再現していました。当時は、有名なジャズのスタンダードナンバーであるCantaloupe IslandやCaravanなどを演奏していました。またその傍ら、簡単なブルースなどで即興演奏の練習をしていました。

初めての演奏会

そしてバンドにとって最初の発表の場である記念祭を迎えました。即興演奏では簡単な曲に挑戦し、そのほかは練習してきたプロのコピーを演奏しました。本物のジャズライブをまねてその場でMCを喋ろうとしたのですが、実際大勢の人を前にすると言葉が浮かばず、上手くしゃべれませんでした。
しかし元々バンドメンバーの実力が高かったのもあり、演奏はうまくいきました。演奏会に来てくださった外部の方、保護者、先生方にも高く評価していただきました。(写真:演奏会の様子)

部活結成!入部希望者も

ジャズバンドの練習は楽しく演奏会も成功したので、バンド内で自然と部活にしてみないかという話が出ました。 バンドの顧問をして下さった先生から、すでにある音楽部の一つの班としてジャズ班を作ることを提案していていただいたので、音楽部部長や顧問の先生に許可をとりその形をとりました。
活動日は週1回で、引き続き音楽部の部室で活動することにしました。どのような感じになるか全く想像がつきませんでしたが、最初の活動日前から早速入部したいという人が出てきました。ブラスバンド班から管楽器奏者やドラマー、室内楽班からベーシストなど多くの人達が入部を希望してくれました。

部活動の内容について

普段の活動は、ジャムセッションのようにその場で曲を決めて即興演奏をするというかたちを想定していました。しかし、最初からみんな即興演奏やウォーキングベース、スウィングのリズムができるわけではありません。そのため、ジャズの基礎を教える所からスタートしました。
部活時間の3分の1を指導にあて、スケールやコード、スウィングのリズムについて教え、部活外の時間でもプロの演奏のコピーやスケール練習などをやってもらいました。
後輩達の中には、即興演奏に自信がなくなかなか上手く演奏できない人もいましたが、1ヶ月程度でほぼ全員即興演奏ができるようになりました。中でも中学1年でジャズ班に入ったピアノ演奏者は、今ではコードを渡されたらその場ですぐに伴奏と即興ができて、フレーズも途切れることなくひけるというレベルまで上達しています。

その後の演奏会

このように練習を重ねる内に全体のレベルもどんどん上がり、学校の文化祭を含めて年2回演奏会を開くことになりました。最初の演奏会は、若干不安もありましたが成功し、その後の演奏会も少しづつ演奏のクオリティーは上がっていきました。(写真:演奏会の様子)
また2回目の演奏会では学校の先生に歌で参加していただき、文化祭の屋外ステージでも演奏するなど演奏の幅を広げました。
演奏の機会を増やしたことで興味を持ってくれる人も増え、音楽部以外からも入部する人が出てきました。そしてつい先日、私が部活を引退してから2回目の演奏会があったのですが、これまでと比べても非常にレベルが高くなっていました。

"人が集まる場"を作る

私はこの経験を通じて、人が集まる場を作ることの価値を実感しました。またそれに必要な様々なことを学んだと思います。
仮にジャズ班のような場がなければ、今班員になっている人はほとんどジャズには興味を持たなかったと思います。自分でジャズを演奏する経験をしないまま大人になっていたはずが、ジャズ班があったから経験することができた。そしてそのうち数名は、きっと一生ジャズや音楽を楽しみながら生きていってくれると思います。

重要なのは「人が集まる」ということです。人がたくさんいれば教えあったり、一緒に演奏もできます。日々の活動自体が表現の場となってその中で切磋琢磨し、より高いレベルに到達できます。そして何よりもそれは楽しいことなのです。
また班員たちも、ジャズ練習する中で様々なことを学んでくれたと思います。例えば、ジャズを演奏するには、スケール練習といったある程度決まりきった練習が必要です。そういった練習の中で、自制心をもって何かを達成する実感をつかんだのではないでしょうか。またジャズの即興演奏というのは、個性を出して自己表現をすることができる自由な場です。班員たちは自分の個性を磨き、自信をもって表現することを学んだと確信しています。

あとがき

以上が、私がジャズ班を立ち上げて運営した経緯とそこから学んだことです。私はジャズの部活動は、近年日本人に不足していると叫ばれている「自分の個性を自信をもって表現する能力」を鍛えるのに最適な場だと考えています。
中高生や教員の方が、もしこの記事を読んでいましたらぜひやってみてはいかがでしょうか。

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